第3回RIZAP鼎談 ゲスト:田知本遥さん(リオデジャネイロ五輪 柔道金メダリスト)

トレーニングも「マンツーマン」なら越えられる

f:id:rizap-media:20171204140455j:plain

ダイエットの先にある「健康」へのコミット--。次のステージを目指すRIZAPのスペシャルトーク企画。第3回はリオデジャネイロ五輪・女子柔道70キロ級金メダリストの田知本遥さんを迎えた。今年10月に現役を引退するまで20年間、柔の道を追究し続けた彼女だが今でも「体を動かしたい」と現役時代とはまた違うトレーニングとの付き合い方を模索中だ。RIZAPオリンピック日本代表選手担当トレーナー・福士貴佑樹とともに、「トレーニングの今」について語り尽くす。司会はスポーツジャーナリストの二宮清純さん。

<スタミナ強化トレで金メダル>

f:id:rizap-media:20171204140516j:plain

二宮清純:  現役生活、お疲れ様でした。引退を発表して心境や生活に変化は?

田知本遥: 柔道は小学校2年生のときから20年間やっていました。今は柔道をやっていたときとは違う日々が始まって、それはそれで刺激的で楽しい毎日です。

二宮: トレーニングは続けているんですか? 腕の筋肉などはそう変わっていないように見えますが……。

田知本: いや、前より腕は細くなったなぁ、と自分では思います。トレーニングは現役時代に比べて量は減りましたが続けています。柔道とは違うことで体を動かしたいな、と。トレーニングをしたり走ったり、健康のためにやっているという感じです。

二宮: 福士さんに伺います。アスリートは、引退後もトレーニングを続けた方がいいんでしょうか?

福士貴佑樹: そうですね。トレーニングをやめると、個人差はありますが筋肉はだいたい2週間後から衰え始めると言われています。何もしないより続けた方が、体のためにもいいですね。

田知本: 週に1回でも効果はありますか?

福士: 十分にあります。トレーニングは筋肉を休める期間も必要なので、毎日やればいいというものではありません。RIZAPに来られるお客様も週に1回という方も多く、そういう方々も通っている間に体つきがシャープになり、そしてそれを維持されています。

二宮: さて最初に現役引退の経緯を伺います。リオが終わった後、もう引退を決めていたんでしょうか?

田知本: リオでは本当にやり切った感じで、次のことは何も見えてなかったんです。周囲の人には「もう少しちゃんと考えてみたら」と言われ、まして次のオリンピックは東京ですからね。

福士: 私もそうですが、東京でも田知本さんの勇姿が見たいという人は多かったでしょうね。

田知本: はい。そう言ってもらえるのは嬉しかったんですけど、私にとってはリオが、他の人の東京と同じくらいの意味を持っていましたから……。

二宮: ロンドンで7位に終わり、そこから巻き返してリオで金メダル。これ以上ないストーリーで完全燃焼した、と……。

田知本: はい。もうあのリオを超えることは無理だと思いました。

二宮: そのリオですが、福士さんもテレビでご覧になってましたか?

福士: 見ていました。田知本さんはノーシードで一回戦から出場し、二回戦と準々決勝が延長になりました。スタミナの面できつかったんじゃないですか?

田知本: 試合の間、控え室ではもう死んだように倒れ込んで休んでいました。しんどかったですね。ただ練習の段階でスタミナ勝負になってもいいように準備はしていたので、試合中に疲労を引きずることはありませんでした。

福士: どのようなトレーニングを?

田知本: バイクを漕いで心拍数を上げて、下げてを繰り返すトレーニングですね。

福士: タバタプロトコル(タバタ式トレーニング)のようなトレーニングですね。あれは結構、きついですよ。

田知本: 本当にきつかったです。

二宮: そのトレーニングはどういう効果があるのでしょうか?

福士: タバタプロトコルは立命館大の田畑泉教授の研究で確立されたもので、高強度インターバルトレーニングの一種です。3分、4分の短時間で高強度の負荷とレストを繰り返すことで、心拍数を上げて心臓から送る血液を増やしたり、あとは疲労物質の乳酸を除去する能力を高めたりする効果があります。田知本さんはどのくらいの強度で行っていたんですか?

田知本: 私は20秒全力で漕いで10秒レストしてというのを5回。これを1セットとして朝のトレーニングで2セット。試合の1~2カ月前から週に1回取り入れていました。柔道の場合は心拍数を上げることも大事なのですが、レストのときにどれくらい心拍数を落とせるかも重要だとトレーナーに言われて、そこを重視していましたね。

<トレーナーと二人三脚>

f:id:rizap-media:20171204140536j:plain

二宮: さてリオに話を戻しましょう。決勝では消極的ということで最初に指導をとられ、結構、綱渡りのような試合展開の末の金メダルでした。

田知本: そうですね。でも自分の中では「絶対に勝つんだ、それが必然なんだ」と思っていたので焦ることはありませんでした。

二宮: 残り2分5秒で相手のジュリ・アルベアルを倒し、そこから横四方固めに。絶対に離すものか、という気迫が伝わってきました。

田知本: あのチャンスを逃したら、待てが入って立たされて最初からになる。だから絶対に抑え込むと決めてました。「あと何秒、あと何秒。絶対に抑えきる」とだけ思っていました。

福士: 残り何秒かを数えるなんて、試合中も冷静なんですね。

田知本: 試合中は目の前の相手のことくらいしか考えることがありませんからね。自分で10、9、8…という感じでカウントしているんですけど、本当の秒数よりもちょっと多めに見積もっておくんですよ。

二宮: 「やった!」と思ったら、「あれまだだった」ということがないように(笑)。

田知本: そうです(笑)。「あと5秒だ」と自分で思ってて、審判に「それまで!」と言われた方がいいですからね。

福士: 田知本さんは金メダルの瞬間、「やった!」という感じではなくて、すごく落ち着いて見えました。あのときはどういう心境だったんですか。

田知本: 金メダルをとったことよりも、あそこに辿り着くまでに挫折とかいろいろありましたから、まさに走馬燈のようにバーッと思い浮かんでいたんです。結果としてずっと欲しかった金メダルをとれましたけど、それは抜きにして「ああ、これがオリンピックなんだな」と、今までやってきたことと自分の感情がパチンとマッチした瞬間でした。

二宮: 金メダルまで辿り着いた田知本さんが、現役時代に一番ハードに感じたトレーニングは?

田知本: 一番は器具系、ウエイトを使ったトレーニングで、10RM(レペティション・マキシマム)というのがハードで好きじゃなかったです……。

福士: ああ。なるほど(笑)。

二宮: 専門家の福士さんのニヤリとした表情で相当にハードなんだということが分かります。具体的にはどういうものですか?

福士: レペティションは繰り返し、反復、マキシマムは最大重量という意味です。なので10RMというとギリギリ反復できる重量を10回やるということ。10回以上は絶対に無理というものなのでめちゃくちゃにキツイんですよ。

田知本: しかも10回というのがしんどいんです。それならちょっと重量を重くして、8回で8RMとかの方がいい。このトレーニングは試合までまだまだ日数があるときにやるものなので、10RMの時期は「早く試合が近づかないかな」と思っていました。

福士: ちなみにRIZAPでは10RMのトレーニングは基本的に3セットで提供しています。

田知本: えっ、対象は一般の方ですよね?

福士: はい、そうです。それを1分休憩でこなすというメニューになっています。

田知本: ものすごくハードじゃないですか?

福士: 最初からいきなりではなく、トレーナーによるガイダンスを受けていただき、さらにフォームを固めるために軽い重さで回数を多くやる期間を作って、そこで体を慣らしてから10RMという流れになっています。

田知本: 10RMは避けられない道なんですね。

福士: はい。脂肪燃焼の効果を高めるために高回数を多くこなしたフェーズの後で、筋肥大のために10RMをやります。このタイミングが一番成長ホルモンが出やすくなるんですよ。

田知本: そういえばお伺いしたかったことがあって、RIZAPは基本的にトレーナーはマンツーマンですか?

福士: はい。お客様に寄り添う二人三脚のマンツーマン指導が基本であり、RIZAPの強みのひとつです。反対に柔道の場合はどうなんですか?

田知本: 選手によります。国立スポーツセンターに行けば、強化選手の場合にはトレーナーがついてくれます。あと東海大時代は学生トレーナーというシステムが充実していて、同級生や下級生のトレーナーがつくという仕組みがありました。そういえば2、3年前に柔道部の後輩がトレーナーとしてジムに就職していますよ。本人は「体格で選ばれたのかな」なんて言ってたくらいなので、ちゃんとトレーナー業ができているのか心配です。

福士: RIZAPの場合は入社すると最初に研修期間が最低147時間以上あって、そこで体のことを勉強します。座学に加えてフォームなどの実技もあり、あとはトレーナーとしての教え方、伝え方など伝達力の勉強も必須になっています。

田知本: そのトレーニングの意味や効果をお客さんにどう伝えるか、ということですか。

福士: そうです。先ほどの10RMを例にすると、10回をお客様にどうやってやってもらうかが大切です。どこの筋肉に効果的なのかという説明ももちろんですし、モチベーションをいかに上げて、そして持続してもらうか。そのためにはトレーナーの伝え方も重要です。コミュニケーションの部分は知識だけでは難しいので、一番力を入れていますね。

田知本: 私も1人で10RMをやれと言われてもできません。トレーナーがついていたから10回できたんだと今でも思います。

福士: トレーナーが「あと何回」と声をかけるだけでも違いますよね。

田知本: 全然、違います。「ハイ、ゴー!」と背中を押してくれないと、なかなか1分レストではいけませんから。

<栄養管理は写メで確認>

f:id:rizap-media:20171204140601j:plain

二宮: 20年間、柔道をやってきて、始めた頃に比べると随分、トレーニングも科学的になってきたのでは?

田知本: そうですね。実際、自分が経験して、練習は内容が大事なんだなと痛感しています。ただきつければいいということではなく、理にかなっているものがやはり効果的だと感じます。あとはきちんと説明を受けた後だと、さらにやる気も出ました。ただ「やれ」と言われるよりも、「これはこういうところに意味がある」と説明されると、「私はここが足りないからやらないといけないな」と、納得できましたね。

福士: RIZAPでもそれは同様です。最初にメニューをお伝えする際に、例えばスクワットなら「お尻や太ももに効果があり、キレイにボディメイクできるので、これをやりましょう」と入っていくんです。そのために最初、お客様の目標とする体型についてヒアリングさせていただきます。このメニューをこなすことで、理想の体に近づける理由をきちんとお伝えしております。

二宮: 階級制の柔道では体重管理も重要です。食事など栄養管理はどうしていたんですか?

田知本: 全日本の合宿や試合には栄養士さんが必ず帯同していました。さらに所属チームに帰ってからもその栄養士さんに毎日、食事を写メで送るとカロリー計算をしてコメントと一緒に返信がきます。「脂質が多いです」とか「この栄養素が足りないからこういう野菜を食べてください」と。

二宮: それは便利ですね。

田知本: さらに海外の大会にも帯同してくれて、世界選手権とオリンピックでは栄養士さんが料理をつくってくれました。

福士: そうすると食事は選手村ではなく?

田知本: 連盟が近くに部屋を借りて、そこで栄養士さんが作った食事を私たちは朝昼晩、食べていました。栄養もそうですが、中には日本食が恋しくなる選手もいるので助かりました。

福士: 栄養士さんと写メでやりとりというのは、RIZAPでもアプリで食事管理をしていますから似ています。写真を送っていただいて、それに対してトレーナーがアドバイスを返信しています。ダイエットも1人だとなかなか達成できませんが、トレーナーと二人三脚だからこそできる、と感じていただけることが多くあります。

二宮: それもマンツーマンですね。ところで柔道選手は丼飯をばくばくっと食べるイメージがありますが、やはり米は太るのでしょうか。

福士: 食べている量にもよりますが、減量という目標がある方に対しては、基本的に低糖質の食事を提案しています。糖質の高いご飯やパン、麺類は抑えてもらい、その分、肉類や魚、納豆、卵などのタンパク質を多くとるようにしてもらっています。

二宮: アルコールに関してはどうなのでしょう。

福士: お酒は糖質もそうですが、アルコールがやはりよくないんですね。筋肉の合成を助けないので、体作りという観点でいえば飲まない方がいい。全日本の栄養士さんはお酒に関しては?

田知本: 女子選手はほとんど飲みませんが、男子はやっぱり……。

福士: 柔道選手は酒豪が多そうなイメージです。

田知本: 飲む人は相当に飲んでいました。だから栄養士さんも「ストレス解消のために飲んでもいい。でも飲むならハイボールを選ぶんだよ」と釘を刺していましたね。

福士: お酒には蒸留酒と醸造酒がありますが、ウイスキー、焼酎、ウォッカ、ジンなどの蒸留酒の方が、低糖質という面ではいいでしょうね。ハイボールはその点でもベターな選択だと思います。

二宮: さて田知本さん、引退後の進路は?

田知本: 現在、ALSOKに所属しながら大学院に通っています。指導者として柔道に関わるのもいいと思っていますが、対象が子供なのか大人なのかすらはっきりしていません。とりあえず今は柔道を通じて世界中に友達が増えたので語学を習得したいですね。

福士: 東京五輪、女子柔道はどうでしょうか。

田知本: リオで女子柔道は7階級、全部違う国が金メダルをとりました。世界のレベルが上がっている証拠なので、地元とはいっても厳しい戦いになるでしょう。ただ、さっきの10RMと同じで、誰かがいればいつも以上に頑張れるもの。地元の応援を受けて選手はきっと活躍してくれると信じています。

福士: RIZAPでもアスリートチームという組織があるので、アスリートの方をサポートできる環境、場所をこれから更に構築していきたいと考えています。先日、WBA世界ミドル級王者になった村田諒太選手もRIZAPでフィジカルサポートをしています。3年後の東京に向け、さらにしっかりとアスリートをサポートできるように頑張っていきます。

<田知本遥(たちもと・はるか)プロフィール>

1990年8月3日、富山県出身。小学2年次に柔道を始める。県立小杉高校卒業後、東海大学に進学。大学4年次の2012年、ロンドン五輪柔道女子70キロ級に出場するも準々決勝敗退(7位)。2013年、ALSOKに入社。2016年、リオデジャネイロ五輪でも同級に出場し、ノーシードながら金メダルを獲得した。2017年4月からは筑波大学院人間総合科学研究科でスポーツ健康システムマネジメントを専攻。同年10月、現役引退を表明した。身長167センチ、体重70キロ。得意技は大外刈り。

f:id:rizap-media:20170824111103j:plain

f:id:rizap-media:20170824141248j:plain

f:id:rizap-media:20170824141302j:plain

f:id:rizap-media:20170824141316j:plain

ページトップへ