厚生労働省によると、2015年に発生した食中毒のうち事件数、患者数ともにノロウイルスによるものが1位となっています。ノロウイルスは発生数が多く感染のリスクが高いため、正しい知識と予防が求められています。
ノロウイルスは冬に流行する
ノロウイルスの発生は一年を通して見られますが、通常、11月頃から発生数が増加し始め、12〜1月頃にピークを迎えます。そこから3月頃までは頻発し、4月頃になると落ち着く傾向にあります。このように、ノロウイルスは冬に流行する傾向があります。ノロウイルスは牡蠣などの二枚貝の内臓に潜んでいるウイルスで、加熱によって死滅すると言われていますが、冬は生牡蠣の季節で、これを食べることによってウイルスに感染し食中毒を起こす可能性があります。しかも、ノロウイルスは感染した人から他の人へも感染するため、一度感染が起こると人から人へと感染が拡大し、患者数が急激に増加する傾向があります。ノロウイルスに感染しても健康状態が良ければ重症化することはあまりありませんが、幼児や高齢者などウイルスに対する抵抗力が弱い人は注意が必要です。さらに、冬は空気が乾燥し、寒さによって免疫力も下がるため、ノロウイルスに限らずウイルス感染の起こりやすい季節。ノロウイルスに感染したかどうかは、通常、その症状やその周辺での感染状況などから推定されることが多いため、知らずにノロウイルスに感染してしまったり、感染していてもノロウイルスとわからなかったりということもあるのです。
感染経路と症状
ノロウイルスの食品からの感染は、食材でいうと、上記でも述べた牡蠣などの二枚貝によるものが多く見られます。これは先述のようにノロウイルス自体が二枚貝の内臓に潜んでいるためで、十分に調理されていない、または生の二枚貝を食べることで感染します。では、人から人への感染は具体的にどのように行われているのでしょうか。ノロウイルスの感染は、人から人へ感染する場合にもほとんどが経口感染によるものと言われています。例えば、感染者のふん便や吐瀉物に触れた手で触ったものを口に入れたり、調理をする人が感染している場合に飛沫が食品について他の人がそれを食べたりすることによって感染する可能性があります。また、人が多く集まるところや家庭では飛沫感染によって直接感染する可能性もあります。ノロウイルスに感染すると、通常24〜48時間の潜伏期間の後、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、軽度の発熱などの症状が見られます。そして、ノロウイルスには抗ウイルス剤がないため、感染した場合には水分や栄養の補給などを行う対処療法が行われます。下痢の症状が現れることが多くありますが、下痢止め薬を飲んでしまうとウイルスが体から排出されず、回復を遅らせることがあるので飲まない方が望ましいと言われています。
ノロウイルスを予防するためのポイント
ノロウイルスを予防するためには、二枚貝を食べる際にしっかりと加熱することが必要です。一般的にウイルスは熱に弱く、加熱処理をすることでその活性を失わせる、つまり死滅させることができます。ノロウイルスを死滅させるための正確な条件ははっきりとしていないそうですが、中心部の温度が85〜90度で90秒以上加熱することが望ましいとされています。また、手洗いもノロウイルス予防のための有効な手段です。石鹸を使った手洗いは、ウイルスそれ自体をやっつける効果はありませんが、手の脂肪などと一緒にウイルスを洗い流し、手に付着したウイルスの数を大幅に減らすことができます。ですから、トイレに行った後、調理をする前、外から帰ってきた際、感染者の吐瀉物を処理した後などには、念入りに手洗いをすることがノロウイルスの感染予防につながります。万一ノロウイルスに感染したような症状があるときには、調理を行わないことも大切です。家庭でも調理施設でも、調理をする人からの感染は一番影響が大きいということを忘れないようにしましょう。このように、ノロウイルスは、感染の可能性が高い反面、予防によって防げる感染症でもあります。一人ひとりの心がけで、感染とその拡大を予防していきましょう。
参考情報
「ノロウイルスに関するQ&A」
厚生労働省、2016/11/18更新、2016/11/19引用