「継続は力なり」ということわざがあるように、何事も「続ける」というのは、そう簡単なことではありません。トレーニングに取り組んでいる人は、そのことを日々、実感しているのではないでしょうか。しかし、三日坊主のトレーニングでは、理想のボディは当然、手に入りません。
今回はRIZAPに通う多くのゲスト(利用者)をサポートするトレーナーが、「普段は運動が全く続けられない」という人でもトレーニングのモチベーションを維持する方法について説明します。
挫折は「当然」! 脳の仕組みや心理学から考えるモチベーション管理
――「今年こそ痩せる!」と意気込んでトレーニングを始めても、最後まで続かないのは、どうしてなのでしょうか?
人が行動を起こす決意をしたときには、ドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。例えば、トレーニングなら「今年こそ痩せる!」といった目標を設定したときですね。このとき、ドーパミンの効果によって「頑張ろう」「続けよう」というモチベーションが高い状態になりますが、この状態は一時的なもの。分泌されたドーパミンは翌日にはなくなっているので、モチベーションは下がってしまいます。
つまり、「決意をしただけでは挫折するのも当然」と認識しておき、その上でモチベーションを維持する工夫を、意識的に取り入れることが重要です。
――モチベーションを維持するためには、何が必要ですか?
まず前提として、その行動自体を「楽しい」と感じているかが大きなポイントです。どんなに頭の中でトレーニングを「するべき」と理解していても、その行動自体を「楽しい」と感じることができていないと、継続するのは難しくなります。言い換えると、楽しいことは継続しやすい、ということですね。
――そもそも、運動やトレーニング自体に苦手意識があり、楽しさを感じにくい人もいるかと思うのですが……?
もちろん、そうだと思います。その場合は「どうすれば楽しくなるか」を考えてみることが大切です。例えば、甘いものが好きな人であれば、自分へのご褒美として、トレーニング直後に「好きなお菓子を1つ食べる」という条件をつけてみるのはいかがでしょうか。
――えっ!? お菓子を食べてもいいのですか?
もちろん、お菓子の種類を選ぶ必要はあるでしょう。例えば「トレーニング直後は糖質を摂っても脂肪になりにくいので、脂質の少ない和菓子を選ぶ」などです。そもそもトレーニングが継続できなければ意味がありませんしね。
――たしかに、そうですね……。
このように、行動とその報酬をセットにして条件づけすることを「アンカリング」と言います。これは、「継続したいことに楽しみをリンクさせる」という心理学的なモチベーション維持方法です。ご褒美は甘いものに限らず、好きな映画を観たり、気になっていた場所に遊びに行ったりでもOK。自分が楽しいと感じられる行動を、トレーニングとセットにしてみるのはいかがでしょう。
大事なのは「目標」ではなく「目的」! トレーニング継続のポイントとは
――トレーニング自体に楽しさを感じていても、続けることが難しい場合もありますよね?
「時間がない」という理由はよく聞きます。しかし、人は誰でも、優先順位が高いと判断したことから行動していくものです。時間がないという人は、単にトレーニングの優先順位が低いのではないでしょうか。これはトレーニングのための時間を、あらかじめスケジュールに組み込んでおくことで、解決できる問題です。
このとき、「トレーニングのための時間を確保して、その予定は動かさない」というルールを徹底することが重要です。企業の社長の方などは、多忙な中でもこの方法でトレーニングを継続していることが多いです。この「優先順位を上げる」というのも継続の秘訣かな、と。
――「1人だと続かない」と悩んでいる人もよくいますよね。
それも多いケースですね。一緒に運動をして、お互いのモチベーションを高めあえるような運動仲間を持つことも大切だと思います。友だちでも家族でもいいですし、私たちのようなトレーナーやカウンセラーもその1人です。
あとは、目標と目的を取り違えず、頑張ってほしいですね。
――目標と目的は、別のものなのでしょうか?
目標というのは、目的を達成するために設定していくものです。 ここで注意してほしいのは、目標ばかりにとらわれないということ。本来、大切なのは「目標を達成することで、自分は何を手に入れることができるか」という「目的」なんです。目的がはっきりしないと、トレーニングを続けている途中で、何のためにトレーニングしているのか分からなくなってしまいます。これは、挫折につながりかねないので。
例えば、10キロの減量を目標にしてトレーニングをするとしましょう。でも結局、10キロというのはただの数字なんですね。それよりも、「美しいボディになって脚光を浴びたい」や「もっとオシャレにいろんな服が着たい」などの目的の方が、モチベーションにつながります。そのため、目的はありありと、より具体的に想像できるものにしましょう。
イメージを膨らまし、モチベーションを高めて、脳がやる気になっている状態でトレーニングを始めるのがもっとも効果的です。そうすると、自然と楽しんでトレーニングに取り組むことができるようになりますよ。
モチベーションは「下がるもの」 重要なのは原因の追究
――モチベーションが下がってしまったゲストの方には、どんなアドバイスをしていますか?
まずは、モチベーションが下がってしまった原因の追究が大事です。体重の変化が実感できないからなのか、プライベートで何かあったのか、体調が優れないのか、といったように、ひと口に「モチベーションが下がってしまった」と言っても、さまざまな理由が考えられますよね。そこを深堀りして、解決方法を伝えられるようなアドバイスを心がけています。
――モチベーションが下がってしまっても、立て直せる人と、そうでない人は、どこが違うと思いますか?
「想い」ですね。「人生を賭けてもいい!」くらいの価値を感じていれば、絶対に続けることができます。「そこまででもないな……」というモチベーションではやはり続けにくく、他のことを優先してしまうでしょう。目的を見失わず、自分がトレーニングをしていて「楽しい」と思える条件や環境を作り上げることができれば、誰でもトレーニングを続けられるはずですよ。
トレーニングをして力を出し切った感覚って、達成感や爽快感といった、本来は気持ちのいい状態のはずなんです。運動が苦手な人でも、その感覚をしっかり味わうことができれば、トレーニングは必ず楽しくなります。だからこそ目的が大切です。私たちプロにぜひ、ご相談ください!
まとめ
- トレーニングを継続するためには、楽しいという感覚をセットにする。
- トレーニングの目的と目標を、どちらも明確にすると継続しやすい。
- トレーニング時間はスケジュールに組み込んで確保、運動仲間がいるとモチベーションがアップしやすい。