ダイエットの先にある「健康」へのコミット――。次のステージを目指すRIZAPのスペシャルトーク企画。第5回のゲストは読売ジャイアンツや横浜ベイスターズで活躍した元プロ野球選手の仁志敏久さん。RIZAP自由が丘店マネージャー・金児巧真とともに、科学的トレーニングと野球の結びつきについて語り尽くす。司会はスポーツジャーナリストの二宮清純さん。
<個々に合ったトレーニングを>
二宮清純: 仁志さんは昨年3月に開催された第4回WBCで侍ジャパンの内野守備・走塁コーチを務められました。2014年からは12歳以下の日本代表の監督も務めています。選手を指導するようになって、最も気を付けていることは?
仁志敏久: 選手との立ち位置、距離感ですね。昔よりも指導側に求められるスキルが高まっていると私は思っています。偉い人は絶対的に偉くて、偉い人が言ったことは全て正しいという時代では、もはやありません。あくまでやっている人、プレーヤーがメインです。
二宮: トレーナーの立場としては、いかがでしょう?
金児巧真: トレーナーとお客様の距離感も同じです。トレーナーがただただ突っ走るのではなく、お客様と共に「こういう目標でやっていきましょう」というロードマップを作る。お客様がその道を外れそうになった時に、トレーナーがどういう声をかけるか。そこで私たちの出番になります。
二宮: なるほど。シリを叩くのではなく、寄り添うイメージですね。
金児: そうですね。方向性は示しつつも、頑張っていただくのはお客様ご自身なので、そのためのコミュニケーションの取り方は非常に重要だと考えています。
仁志: 指導者は選手よりもやはり上にいなければならない。しかし、そのことをあまりにも相手に感じさせてはいけない。当然、指導者が下だと感じさせてしまうのも良くない。そうするとやっている側はどんどん自分で突っ走ってしまいます。
金児: コミュニケーションではモチベーションを引き出す方法も人それぞれです。褒めて伸びていくお客様もいれば、ある程度厳しく言った方が燃えるという方もいらっしゃるので、その人に応じたやり方を重視しています。
二宮: 仁志さんといえば常総学院高、早稲田大、日本生命を経て巨人に入団した、いわゆる野球エリートです。野球については最先端のものだったでしょうが、トレーニングはどうでしたか?
仁志: マシンを使ったトレーニングを本格的に始めたのは社会人のころです。当時ウェイトトレーニングはプロ野球界にはあまり浸透しておらず、むしろアマチュアの方が進んでいました。なので、プロに入ってからの数年間はあまりやらなかったですね。ところが、自分の中で何かを変えたいという思いがあって、プロ4年目のときに自宅にトレーニングルームを設けました。
二宮: 自宅にですか、それはすごい。そのころの巨人はあまりウェイトトレーニングには熱心ではなかったのでは?
仁志: 多分数えるほどの人しかやっていませんでした。
二宮: 野球界には“筋トレをすると筋肉が硬くなる”とか、“腕が太くなるからよくない”という俗説がありましたね。
仁志: 僕らの時代はトレーニングメニューのノウハウがあまり開発されていませんでした。間違っているというわけではなく、大切なのはやり方ですよね。ウェイトトレーニングもやり方を誤ってしまうと逆にパフォーマンスを下げてしまう。特に野球の場合は動きが複雑なので、単純に筋量を増やせばいいという問題ではないんです。
二宮: 負荷ばかりかけてもよくないと?
仁志: はい。特に日本人の場合は関節の可動域をうまく使わないと力が発揮されない。スイングでも欧米人のように手で押す力が強いと、筋肉がガチガチになっていても、ガンと振っただけで打球が飛んでいってしまう。そこまで腕力のない日本人の場合はやはり柔軟性が必要です。
二宮: 金児さん、そのあたりはいかがですか?
金児: そうですね。先ほど仁志さんから関節のお話がありましたが、人によって関節の可動域も全然違いますので、個々に合わせたトレーニングを組むことが重要です。RIZAPでは、実際にトレーニングをしていくなかで可動域や硬さを見極めながら、重さや種目を変えていきます。その人の体質や体型、レベルに応じたメニューを用意しています。
<大切なのは“フィジカルファースト”>
二宮: ところで仁志さんは内野手で足も速く、小技もできる。さらに小柄ながらホームランをシーズン20本以上打つパワーも備えているという三拍子揃った選手でした。現役時代のトレーニングはどのあたりを中心に強化されたんですか?
仁志: やはり基本的なパワーは欲しいと思っていました。そこで若い頃は上半身のパワーを求めていましたね。
金児: その場合、上半身なら大胸筋や広背筋を中心に鍛えることになると思います。いわゆる「大筋群」と呼ばれる部分を鍛えれば、体のフォルムが大きくなり、パワーの面でもアップします。
仁志: 私も広背筋は特に意識していました。さらに言うと内野手、特にセカンドは低重心で速く動かないといけないんですね。それには下半身の筋力も必要なんです。安定した姿勢を保つ強さとスピードが求められます。
金児: 仁志さんのおっしゃる俊敏性が求められる場面では「筋の連動性」がすごく大事になってきます。
二宮: オリンピックでスピードスケートの選手がよく「筋の連動性」について話していましたね。
金児: 例えば足、関節でいうと足首だとかヒザの向きだとか股関節の向きであるとか。その向きひとつでコンマ何秒という差が出ます。下半身を鍛える際にも、そうした関節の向きや動きを意識して、そして自身が得たい動作に合ったトレーニングメニューをこなすことがすごく大事だと思いますね。
仁志: 人間がやる動作の当たり前のことだったり、体の動きを知っておかないと、「筋の連動性」はうまくいかないですよね。金児さんが言われたように、例えば足の指から足首、そしてヒザへと体重移動していくという具合に……。いずれにしても下半身の力をうまく上半身に伝えないといけないですから。
二宮: プロの世界に入ったとしても、体の構造がわかっていないと一流にはなれませんね。
仁志: 本当にそう思います。スポーツはプロだけでなく子供でもそうですが、技術よりもまずフィジカルがあってこそだと考えています。
二宮: フィジカルファーストですね。
仁志: 技術は誰が教えてもなかなか身に着くものじゃない。根本的に変えるとなると、基本的な身体能力を変えていかないといけないんです。フィジカルがまずあって、それからテクニックがあるんですよ。こうした考え方は様々な世代の指導者に理解してほしいですね。先ほど言った低く速く動くこともそうですが、筋力が無いと習得できない技術もありますから。
<栄養はバランスよく適量に>
二宮: ところで、体を鍛えるということではトレーニングだけではなく、栄養管理も重要になります。RIZAPは栄養面も熱心に指導してくれます。
金児: はい。皆様の目的に応じた栄養の摂り方やタイミングなどを指導しております。各トレーナーがお客様のその日の朝の体重や水分摂取量、さらには便通なども含めて確認させていただいております。基本的にデータを毎日送っていただき、フィードバックをしています。
二宮: 便までですか。そういった密接なやりとりが結果にコミットする原動力なのでしょう。栄養に関してですが、以前はなるべく色々な種類を豊富に食べろと言われたものですが、どうもそれが最善というわけでもないようですね?
金児: そうですね。多く摂ればいいということではなく、臓器にかかる負担も考慮して、自分の体に見合った量をバランスよく摂るのが今は主流になっています。
二宮: あれもこれも食べなさいではなく、カロリーを計算することが大事だと?
金児: もちろんお客様によっても違いはあります。一杯食べてほしいという方もいますが、多くの場合はムダなものをためない、体内に吸収できるギリギリのラインがちょうどいいと思いますね。
二宮: 仁志さんは現役時代、たとえばプロテインは飲まれていましたか?
仁志: えぇ、飲んでいました。よく子供たちを指導している時に親御さんから「プロテイン飲ませてもいいんでしょうか?」と聞かれます。どうもあれを飲むとバキバキに筋肉がつくのではと思っている方もいるようです。栄養補助食品なので、積極的に摂ってほしいと思いますね。
二宮: RIZAPではそういったサプリメントの指導も?
金児: はい。これを摂りましょうとか、こういったものがこのような効果がありますというアドバイスもさせていただいています。仁志さんがおっしゃったように、栄養補助食品なのでバランスを考えて必要摂取量を摂っていただければ非常に効果が期待できます。瞬間的に効果があるというよりも、ある程度の期間を継続して摂取することが大切ですね。
二宮: ところで仁志さんはRIZAPにどのようなイメージをお持ちでしょうか?
仁志: 最初は衝撃的でした。コンパクトなスタジオ式のジムが現在のトレンドですが、個室になっているだけでなく一人一人にパーソナルトレーナーがつくというシステムに驚きました。しかも、そういった成功に甘んじないで、次から次へと新しいことを打ち出している。すごくブランディングが上手だなと感じますね。
二宮: 以前、RIZAPの瀬戸健社長は「ダイエットが成功したら人間は気持ちが前向きになって明るくなるから“もっと健康になりたい”“新しいスポーツを始めたい”と前向きにもなる」とお話しされていました。
金児: 私たちトレーナーも、ひとりひとりがお客さまに対して会社のメッセージを発信していきたいと考えています。そのためにも強く意識しているのがやはりコミュニケーションです。三日坊主で終わるのではなく、しっかりと結果を掴むことができれば、新たに目標も生まれますし、活力がさらに湧いてきます。お客様に有意義な時間を過ごしていただけるよう、精一杯サポートさせていただきます。
二宮: 進化を止めないRIZAPの次なる挑戦に注目です。
<仁志敏久(にし・としひさ)プロフィール>
1971年10月4日、茨城県出身。常総学院高校、早稲田大学、日本生命を経て、96年ドラフト2位で巨人に入団。同年の新人王に輝く。2年目の97年にセカンドに転向。華麗な守備で99年から4年連続でゴールデングラブ賞に輝いた。2007年に横浜ベイスターズに移籍し、10年に現役引退。13年、侍ジャパン(野球日本代表)の内野守備・走塁コーチに就任し、17年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に帯同。現在は12歳以下の侍ジャパン監督として、若手年代の育成に力を注いでいる。